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SFとスパイものの映画、小説のレビューなど

『あなたのための物語』レビュー - 和製言語ものSF

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 長谷敏司あなたのための物語 (2009)

 

「言語ものSF」と呼ばれる類いだろうか。

21世紀末のシアトルが舞台。主人公の天才研究者サマンサ・ウォーカーがオーナーの一人であるニューロロジカルというハイテク企業が産み出した技術、NIP (Neuron Interface Protocol)とか、ITP (Image Transfer Protocol)とかとかの技術を使って、擬似神経によって思考するAI “Wanna Be”を起動する。

Wanna Beは小説を書くというミッションを与えられる。余命が残り少ないとわかったサマンサは研究に没頭し、会社も無視して孤立しながらWanna Beと研究を続けるうちに、だんだんWanna Beを人間のように思えてきてしまうというタイプの話。

 

ハイテクSFものかと思いきや、死、感情がテーマであり、文章も難解気味で、展開が少なく、それでいて長いということで読みにくさもあったけど、その設定自体は興味深く、あり得なくはなさそうだという「ハードSF」マナーに則った物語。サマンサとWanna Beの間の「人間模様」も見どころ。

 

身の回りに近未来的な発明があるのもおもしろい。

  • 環境セル:自動で温度調整がされるドライスーツのようなもの。便利だがファッション的な観点で普及してないらしい。
  • 全自動車(ロードキャビン):こっちは普及してる。
  • 紙状端末:紙のように薄いタブレット端末みたいなものだろうか
  • 羊水タイプの介護ベッド:液体に使って、皮膚から栄養素をとれる
  • 版権切れの小説を自動製本機で製本して読む無料の娯楽

 

アシモフ、レイブラッドベリ火星年代記』、ジョージ・オーウェル1984年』など、SF作家は古典SFを引用したがるの法則。

 

 

おすすめ度:★★★★☆ 

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:長谷 敏司
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫